国民の祝日である文化の日は、1・1・03の語呂あわせで「いいお産の日」でもあります。
1994年に出産情報誌のイベントで提唱されて広まり、以降、毎年11月3日を中心に、妊娠や出産や育児について語り合う活動が全国各地で行われています。
そこで今月は、母となる女性たちに寄り添い、出産現場で命の誕生を手助けする助産師さんたちにお話を伺いました。


高山赤十字病院
助産師 城下佳代さん






▲高山赤十字病院産婦人科のスタッフ

▲ママのケアに寄り添って


▲小学校で行った「命の学習」

お母さんやご家族が
安堵する笑顔に、
あたたかい気持ちがこみ上げます。
助産師は、幸せな仕事です。


 飛騨地域の周産期(妊娠22週から出生後7日未満まで)母子医療センターに認定されている高山赤十字病院は、飛騨地域の中核病院として重要な役割を担っています。
1病棟4階(産婦人科病棟)では、リスクの高い母体・新生児の他院からの受け入れ、および地元出産を希望する里帰りでの分娩支援、産婦人科疾患で手術を受けた人などのサポートを行っています。
18人の助産師を含む33名のスタッフが2交代で勤務し、産婦人科医・小児科医とともに24時間体制で対応。
総合病院ならではのサポート体制のもと、できる限り自然なお産を大切にしています。
医師と助産師が連携して妊婦さんにやさしい健診≠実施し、助産師が主体となって行う助産外来や母乳外来もあって、妊娠や授乳の悩みにもきめ細やかに対応しています。
 「助産師がサポートするのはお産だけではありません。
妊娠、子育て、さらには子どもたちへの教育など、とても幅が広いんです。私たちは助産外来などを通じて、妊娠中からさまざまな相談にのり、妊婦さんが安心して出産に臨めるような心身の準備と、産後のケアをしています」と語るのは、病棟係長を務める城下佳代さん。
ご自身も、かつて子宝に恵まれず悩んだ時期があったそう。
「それゆえに、子どもができない方の苦しみもわかるつもりです。
自分を含め、たくさんの方の出産を見てきて思うのは、子どもは親を選び、タイミングも考えて生まれてくれるということ。
その人のもとへ、その時に生まれてくるのは意味があって、お母さんも、ご家族も、赤ちゃんと一緒に変化していきます。
不安だらけだった妊婦さんが、出産後はすごく笑顔になられて、どんどん頼もしく変わっていかれたりするのを目の当たりにすると、赤ちゃんがそうさせてくれている気がします。
お乳を与える時、お母さんの脳内では幸福ホルモンが分泌され、見ている人にも幸福感が伝わるのだとか。
そういう場にいられる助産師は幸せな仕事です」。
笑顔の城下さんは「お母さんと赤ちゃんにより良いケアを提供できるやさしい病院≠目指して、みんなで力を合わせて取り組んでいきます」と、目を輝かせて話します。


久美愛厚生病院助産師
桂川尚子さん 田渕裕美さん
吉村清美さん 森みね子さん





▲久美愛厚生病院産婦人科のスタッフ


▲イベントにて「寝転んでアート」

▲イベントにて「骨盤底筋体操」

その人を見て、手を握って、
寄り添う心は、人間ならでは。
ロボットの時代が来ても、
決して変えてはなりません。


 高山市のもうひとつの中核病院である久美愛厚生病院は、産婦人科医、助産師、看護師が連携しチームで妊婦さんと赤ちゃんをケアしています。
入院病棟は他科と同フロアですが、産婦人科エリアだけは、通路に扉を設置して安全・安心を確保。
病院は5年前に新築移転されたばかりとあって、快適環境と万一に備えた防犯設備が整っています。
「赤ちゃんがいるだけで、その場所が明るくなります。
産婦人科は光のあり処で、命の誕生は病院全体に希望を与えてくれます」と、砂畑文子病棟師長。
病棟には笑顔があふれています。
 チームで仕事をする助産師の皆さんは、申し送りを細かく行って情報共有を徹底。
国内外で50年以上にわたって助産師を務め、5000人以上を取上げてきた森みね子さんは、「助産師にとって一番大切なのは、寄り添う心。
妊婦さんが安心できることが安産につながります。
妊娠中もお産のときも、私たちは妊婦さんに寄り添い、安心してもらえるようにしなければなりません」と語ります。
森さんは、退院後のお母さんたちにフォローの電話をかけ、授乳や育児の悩みにも対応します。
「お乳が出ないって辛いんですよね」と話す吉村清美さんは、母乳外来ではよきアドバイザー。
「体調も悩みも育児方針も一人ひとり違うので、どうしたいのかを聞き、その人の気持ちに寄り添って、一緒に最善の方法を探っていきます」と語ります。
 チームの先輩たちを「いろいろ相談できて心強いです」と話す田渕裕美さんは、自分自身も妊婦さん。
出産に向けて、自らの体もいたわりながら仕事をしています。
桂川尚子さんは「母と子の2人の命をお預かりする仕事なので緊張しますが、チームや看護師の皆さんと協力して乗り越えています。
出産後も緊張は続きますが、赤ちゃん誕生は本当に嬉しくて、みんな笑顔になるんですよ」と語ります。産婦人科の皆さんは、そんな笑顔を病院全体にも届けたいと頑張っています。



アルプスベルクリニック
助産師 松山梢さん




▲アルプスベルクリニックのスタッフ


▲ベビーマッサージにて

ダイナミックな命の営みは神秘的。
日々感動し、学びながら、
人に寄り添って、支えていける
助産師でい続けたい。


 中学時代のふれあい看護体験で胎盤を見て生命の神秘を感じ、「助産師になろう」と決意。
夢を叶えた松山梢さんは、「やりがいのある仕事で毎日感動しています。
例えば、妊婦さんのお身内の方が亡くなられた時でも、赤ちゃんは生まれてきて、生も死も人の営みなんだなぁ、人がいる限り、生まれて命がつながっていくんだと思ったりします」と話します。
岐阜県総合医療センターなどでの勤務を経て、「地元で役に立ちたい」と2015年からアルプスベルクリニックへ。
「命を預かる助産師の仕事は責任重大で辛いときもありますが、それ以上に得るものが多く、お母さんや赤ちゃんから、いつもエネルギーをいただいています」と目を輝かせます。
前の職場ではハイリスクの症例を多く経験し、その学びが自身の成長や自信につながったといいます。
「お産にはいろいろなスタイルがあり、中にはお腹を痛めていない≠ニ悩む方もいらっしゃいますが、どんなケースでも、お母さんの頑張りがあって赤ちゃんが生まれてくるのですから、自信を持ってほしい。
産んだことと、生まれたことは素晴らしいと、全ての人に伝えていきたい」。
松山さんは熱く語ります。



助産院なお
助産師 長田直子さん





▲生まれた赤ちゃんを
見つめるお兄ちゃん


▲長田さんの小学生時代の恩師が
 手作りしてくれた看板



産む人も、産まない人も、
女の人も、男の人も、若い人も、
少々お年を召した人も、みんな素直に
心開けるあったかい場所でありたい


 高山赤十字病院に21年間勤務した長田さんが、独立して助産院を始めたのは1年前。
「ご縁がつながって、導かれるように開院できてしまいました」と振り返ります。
先頃、中秋の名月の日に、「助産院みのり」の中谷さんと二人で自宅出産に立ち会い、「赤ちゃんってすごい力を持っていて、愛のあふれる存在」と改めて実感したとか。「私たちはそばで支えていた出産立会人に過ぎなくて、赤ちゃん自身が家族の都合を理解して、すーっと出てきてくれた気がしたんです」。
助産院はいわば昔の産婆ですが、現在は総合病院との契約が義務付けられ、長田さん、中谷さんは二人とも高山赤十字病院と連携。
妊婦健診にも付き添い、リスクがある場合は早めに病院にバトンタッチします。
長田さんの活動は、妊娠・出産・産後ケア、おっぱい相談など幅広いママケアを筆頭に、思春期応援相談やカップル相談、いのちの講座、パパママブラスバンドCOCONWINDSなど多彩です。
「赤ちゃんは、本来、人って愛されて生まれてくると思い出させてくれます。
みんながそれに気付けたら、世界はもっと明るくなるはず。
私は、あったか家族応援団長として、笑顔を広げていきたいな」。
長田さんはにこやかに語りました。




助産院みのり
助産師 中谷美穂さん




▲自宅でのお産


▲診察室



出産も育児も、教科書はありません。
「これでいいんだ」と納得できたら、
それでいいんです。
自分を大事にしてください。

 

 2009年に開院した中谷美穂さんは、「助産院なお」の長田さんとは学生時代の同級生、高山赤十字病院でも同僚でした。
お二人は独立開業していますが、良きパートナーとして協力関係にあります。
「女性の生き方や価値観が多様化している現代、お産も選択の幅があっていいと思うんです。
リスクがあれば病院しか選択できませんが、異常がなく自力で産める人であれば、助産師が寄り添って自宅で出産する方法もあると知っていただけたら」と語ります。
アロママッサージなどを取り入れながら、妊婦さんの心身をケアする中谷さんは、「女性が自分を大事にし、元気な赤ちゃんを産むぞと主体的になることがスムーズな出産につながる」と感じているそうです。
「お産も育児も教科書はないので自分なりの方法を探ればいいんです。
動物はみんな自力で産んで、自分の子だけを見て育てるのですから、人も、子どもから目をそらさず、その意志を受け止めていくことが大切ではないでしょうか。
赤ちゃんの能力はすごくて、いろんなサインを出してくれています。
そんなこともお伝えしながら、私も一緒に学び続けて、その人らしい出産や子育てを応援していきたい」と力強く語りました。

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