黄金の稲穂が飛騨の田園に波打つ実りの秋
豊かな恵みは新米となって食卓に幸せの笑顔を運ぶ
飛騨のお米は世界最上級「米・食味分析鑑定コンクール 国際大会」では
飛騨から出品されたお米が2年前から連続で最多入賞数を獲得しているのだ
11月26・27日には同コンクールの第20回大会が高山市民文化会館で開催される


米のオリンピックで飛騨米がトップに


▲JAひだ営農推進対策室
営農企画課
 松井明彦さん

 おいしいお米を選ぶ「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」は、歴史・規模・内容において日本最大級の米コンクール。
米・食味鑑定士協会が1999年から毎年主催し、第10回大会以降は国際大会となってアメリカや中国、台湾などからの出品もあり、お米のオリンピックとも言われている。
昨年の第19回大会(山形県真室川町)の出品点数は5551点で、飛騨のお米10点が入賞。
前年の18回大会(熊本県菊池市)でも同じ成績を収め、2年連続で全国最多入賞数の栄誉に輝いた。
ちなみに2番目は長野県の9点、3番目は群馬県の8点と続く。
つまり、本州の内陸高地がおいしいお米の産地として台頭。トップとなった飛騨に注目が集まっている。
 そんな事実を、「ぜひ地元の方々に知っていただきたい。
そして、地域全体でふるさとのお米を考える機会にしていただきたい」と呼びかけるのは、JAひだ 営農推進対策室 営農企画課の松井明彦さん。コンクールの実行委員会では、今回の大会を契機に飛騨で収穫されるお米の全てを「飛騨米」と呼んでブランド化を推進中。飛騨の農業関係者は、「飛騨米」と染め抜かれたあかね色のポロシャツを着てアピールに力を注いでいる。松井さんは「こんなにおいしいお米の産地なのに、地元販売店のお米売り場には、他産地のお米が多くのスペースを占めているのです」と疑問を呈する。
 第20回大会の総合プロデュース担当を務める松井さんは、「今度の大会は特別。
飛騨の米づくりにとっては千載一遇のチャンスです」と、並々ならぬ意気込みで準備に当たっている。
20回目という節目で平成最後の記念すべき大会であることに加え、今年は約半世紀続いた米の生産調整が廃止された農政大改革の年だ。
偶然にも、日本の稲作の転換点となるその時に、地元で大会が開催され、しかも、3年連続入賞数日本一の期待も膨らんでいる。
飛騨では行政・JA・関係団体などが協力して実行委員会を組織。
開催地が、こうした広域連携を組むのは、大会史上初めてという。
 「米価格の低迷や減反政策、さらに農家の高齢化も追い打ちをかけて、飛騨地域の米づくりは、長年右肩下がりの状況です。
毎年50ヘクタールの耕作放棄地が生まれ、水田面積4800ヘクタールの内、主食用の作付けが行われている水田は現在2700ヘクタールまで減少しました。
稲作は、観光地飛騨の里山の景観形成にも欠かせず、何としても守っていかねばなりません。
この大会が一過性ではなく、農家の皆さんが意欲と希望を持ってお米を作っていけるようになるきっかけ、飛騨の米づくりが右肩上がりに転じる機会にしたいのです。
大会両日はどなたでも入場無料ですから、消費者の皆さまにもたくさんお越しいただき、飛騨米に関心を持ってもらえたらうれしいです」。と、松井さんは熱く語る。
会場には各地のお米の試食コーナーなども設けられ、一般の人も楽しめる催しになる。
各地のおいしいお米が一堂に揃う最大規模のコンクールが地元で行われるのだから、これを見逃す手はない。
ぜひ会場に訪れて飛騨米の三連覇を応援したい。

 


飛騨米のおいしさの秘密

▲研究所にある穀類総合調製
選別機で脱穀、精米


▲整粒値や食味値、
保水膜量などを調べる
左から岐阜県中山間農業研究所
 研究員 石橋裕也さん、
研究員 可児友哉さん、
所長 鍵谷俊樹さん

 今大会のお米の出品数は過去最高の6000点になると見込まれている。
その審査は、次のようなものだ。
一次審査は食味分析計で玄米の水分・タンパク質・アミロース・脂肪酸の数値を測定。
総合評価で85点以上を獲得し、なおかつ整粒値(粒の大きさが揃っている値)75%以上のものが次に進む。
二次審査では精米した白米を味度計によって測定。
味度はお米の表面の保水膜量の数値で、値が高い、すなわち保水膜量が多いほど、お米はつやつやとして味わいを増す。
最重要部門である「国際総合部門」では、一次・二次審査の合計点の40番目までが最終審査に進出。
米・食味鑑定士30人による官能審査、つまり、炊き上がったお米を実際に食べ、おいしいと思ったものに投票する審査を受ける。
全国には、多くのブランド米やブランド産地があるが、米・食味分析鑑定コンクールは、一次・二次は機械による計測数値、三次は品種も銘柄も産地も一切わからない状態にして審査。
純粋にお米の味そのものが科学的・客観的に評価される。
その中で飛騨米が2年連続最高の成績を上げたことは、実に誇らしいことだ。
 飛騨市にある岐阜県中山間農業研究所は、中山間地農業を維持・発展する「元気な農業づくり」を目標に、ぎふ農業・農村基本計画と連動した研究開発・地域支援を推進する県の機関で、稲の研究も行っている。

そこで、鍵谷俊樹所長と研究員の可児友哉さん、石橋裕也さんに、おいしいお米の指標とされる数値について聞いてみた。
「食味値の鍵は玄米のタンパク質含有率。
肥料が多く、かつ、お米の実りが悪いとタンパク質含有量が上がって、まずくなります。
そのため、生育に応じて肥料を適切に管理し、タンパク質含有量を減らすことが大切です。
味度は、米表面の保水膜量で、いわば歯ごたえのようなもの。
稲の実り方が重要で、短期間で実っていくのはよくないと思っています。
涼しいなかでゆっくり実り、日差しも充分で根も葉も元気で夏バテしていない稲は、保水膜量が増えます」とのこと。
近年、気温が高くなっている平野部に比べ、内陸高地である飛騨の環境は、味度向上の条件にうまく当てはまる。
 「飛騨は山間地で厳しい土地だったからこそ、人々は土作りにも熱心で先祖代々の田畑を懸命に育ててきました。
この地域には、そういう努力のDNA、いわば農業の匠(たくみ)の技があると思います。
飛騨米の躍進は、水田をとりまく環境と匠の技が融合し、そこにコシヒカリ≠ニいう品種が見事に当てはまった結果だと思います」と鍵谷所長は考える。
また「今年の新米の出来は、夏の異常気象や台風の影響が心配。
匠の技で被害は最小限ですが、コンクールを目前に控え、期待と不安が入り交じる思いです」と話している。

米づくりの新時代を拓く、素人農園の挑戦!

▲和仁農園 代表取締役
和仁松男さん


▲ライスボウルMVPにお米を贈呈
 写真右はプレゼンターを務めた
 JAひだ駒屋廣行組合長

▲ギネスブックに
「最も高いお米」として
 認定された世界最高米
 (高山稲作友の会の
平瀬廣之さんも認定)

 

 この大会を足掛かりに新しい米づくりに挑戦してきたのが、高山市上宝町で農業生産法人(株)和仁農園を経営する和仁松男さん。
もともとは建設会社の社長だったが、「今は農業がおもしろくてしかたがない。
ゴルフの何倍も楽しくて田んぼばかり見ている」と笑う。
専門外の農業を始めたのは18年程前。「後継者不足による耕作放棄地が増え、ふるさとがダメになってしまうと危機感を抱いた」ことがきっかけだった。
「長年建設業で地元にお世話になってきたので、ささやかな恩返しのつもりで高齢の農家の方に代わりにやりましょうか≠ニ言ったら、うちも、うちも≠ニ方々から頼まれちゃって」とふり返る。
 当初は野菜を栽培していたが、預かる農地が増えたこともあり、5年後には稲作に特化した。
しかし建設業から参入した素人農業を世間に認知させるのは難しかったという。
「飛騨は中山間地で、預かった田んぼは点在しているため大規模農業には不向き。
生産原価が高くなるので、収益性の高いおいしいお米をつくり、価値を認めてもらうしかないと考えました」。
そこで、和仁さんは農園のお米を米・食味分析鑑定コンクールに出品。
2007年度の第9回大会で見事金賞を獲得し、以降も毎年挑戦して10回入賞という快進撃を続けている。
今では和仁農園のお米は全国に知れ渡り、顧客には東京の一流ホテルなども名を連ねる。
 和仁さんの挑戦が刺激となり、飛騨からコンクールに出品する人も増えてきた。
それが近年の最高入賞数獲得につながっている。
しかし、素人集団の和仁農園が、なぜ、おいしいお米をつくることができたのだろうか。
和仁さんは語る。「素人ですから、指南書はJAひだが取扱う日本農業新聞。
農業の原点である耕畜連携の有機栽培を徹底し、育ち具合を見て常に考え、稲本来の活力を最大限に引き出す手伝いをしてきました。
仕事の基本であるPDCA(Plan・Do・Check・Action)を実践し、工夫改善を続けています」。
米作りの最重要課題を雑草対策と水管理と見定めた和仁さんは、ICT(情報通信技術)を活用した農法の見える化や作業のマニュアル化を推進し、省力化のための水田除草ボートまで開発。
それらのノウハウは、今、国内外から注目されている。
和仁さんは「農業は、開発・発展の可能性が大いにあります。飛騨を世界一おいしいお米の産地にし、地元のすべての方に飛騨米を食べていただけるように、生産コストも含め、さらに努力しなければ」と、目を輝かせる。

 飛騨の生産者たちが日々手塩にかけて育て上げた地元の宝、飛騨米。
この秋はつややかに輝きふっくらと炊きあがった新米をぜひとも味わいたい。
まずはコンクール会場に足を運び、お米の世界に触れて楽しんでみよう。


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